「家族的類似」はヴィトゲンシュタインが「哲学的探究」で,家族の成員間の体格,顔つき,気性などの共通の要素があるからではなく,実際は共通項が様々に重なり交差しているにもかかわらず,その集団をひとつの家族と認識できること,枝葉末節にとらわれずにゆるやかにグループとしてとらえることを「家族的類似」と呼んだ.政治理論は政治学における学際的研究で,理論の正誤を判断するのではなく,各理論の学習に加えて,政治を理論化する普遍的探究が目的である.「家族的類似」は個々の政治理論に囚われすぎることの注意,多義的な個々の政治理論(特にリベラリズム)の理解にとどまらず,国家の基礎とその倫理的正当化を最も深層において理解するために,概念分析と道徳の理論化の両者によって俯瞰的に深く考察すべし,との心がけを示唆するメタファーである.  

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