19世紀の政治思想には,知性と徳性の力で,個人の問題も社会の問題も共に解決できるとの共通の信念があった.20世紀の政治思想は,人間の理性的開放への期待が急速に衰退し,無意識な非合理的な力の影響が理性の力を凌駕していると考え,現在の問題を理性的に解決しようとせず,思想や議論以外の方法,すなわち力や技術力によって問題自体の除去による解決を模索した.人民は惨事により,政治に対する失望,不信から,安全であれば良いと捨て鉢的な精神状態となり,全体主義が勃興し,自由が消失した.政治哲学の死滅,イデオロギーの終焉,政治理論研究の歴史主義の批判,論理実証主義による形而上学の批判などがなされた.19世紀と20世紀の政治理論の違いは,知性主義 VS 理性の懐疑である.
写真:松江フォーゲルパーク(島根県観光連盟)