厚生労働省の人口動態調査が発表され,2021年の出生数は81万人余りだった.死者が144万人なので60万人を超える自然減少.これからしばらくは死者は増えるだろうから人口減少は加速していく可能性が高い.
 出生数が100万人を切ったのがつい数年前(2016年),それが2021年には81万人になってしまった.2011-16年の減少率1.4%が2016-21年は3.4%に2.4倍になっている.新型コロナの影響もあるのかもしれないが,5年で出生数20万人の減少は専門家でなくとも人口減少の深刻さを実感する.

図表1出生数推移(厚生労働省人口動態調査より)
1971-2001年は10年ごと,2010-2021年は毎年

 250万人を超えた戦後のベビーブーマー(1949年はおよそ270万人)は特別として,三分の一になってしまってはあまりにも少なすぎる.大学の進学率が上昇しても優秀な人の割合はそれほど変わらないだろうから,つまり半分になったら相対的に優秀な人も半分となるから,難関校の定員はレベルを保つために単純計算で半分や三分の一に減らさなくてはならない.定員確保を優先して合格レベルを下げたらそれこそ致命傷になる.学生レベルを維持しながら学生数を確保し,高度な研究活動を続け大学経営を健全にするには合併・統合が必要になるのもうなづける.何より,ますます日本の停滞は増すことになるだろう.

 人口減少が悪いということではないが,その減少を緩やかにする必要がある.そんなことはわかっている.したくてもできないから問題だし,困っている.しかし,子どもの教育費や医療費を軽減したり,減税あるいは手当を支給したりしてもそれは対処療法でしかなく,根本的な問題を解決する必要がある,がそれも当然みんなわかっている.それができないからせめてもの対処療法を施しているのだから.
 日本はこのままでは停滞に止まらず,衰退に向かうことになる.スペイン,イギリスも世界の雄から勢いを無くし精彩はないかもしれないが,まだ踏みとどまっている.ということは日本もそれなりに踏みとどまれるのかもしれない.救いはまだ時間があるということか.収まるところに収まるということかもしれない.古代文明に始まって,ギリシャ,ローマ,ヨーロッパ,と先進国は交替している.歴史は繰り返すということかもしれない.ただ,日本は江戸時代の鎖国から明治維新,軍国化,侵略,二度の世界大戦,敗戦からの復興,バブル崩壊とジェットコースターの歴史を歩んで来ている.先例や歴史は日本の場合参考にならないかもしれない.まだ時間はある,潜在能力は低くはない.でも,このままでは良くないことも間違いない.

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