シングルマザーといえば,貧困,所得の低さ,とくに社会が混乱,景気が停滞すると最初に標的となる弱者(vulnerable).コロナ禍でも社会問題のひとつとなっている.
テーマを絞るため,まず両極端の二つの論点を排除をする.それらは,「社会が悪い」と「自業自得」.女性に不公平な社会制度(人のせい)が残っていること,そしてシングルマザーとなったのは選んだ男がろくでなし(その男性を選んだ自分のせい).ともに確かに一因,主因のひとつでさえあるが,社会体制をすぐに変えるのは難しい,また,男性の選択法もここでは外す.
ここで論点とするのは,2点.まず,医師,弁護士,会社の総合職,公務員,美容師,看護師などの資格や職能を身につけること.当たり前ではあるが,仕事をしようと思えばできる状態にしておくこと.いざ,仕事をしなければならないとなった時に何もできない,では貧困になる.また,「マザー」に親和的な保育士,介護士などの報酬を上げて生活が成り立つ賃金体系にすることも必要だろう.保育士は仕事をする女性に必要でもある.介護士は今後10年不足が予測される.
もう1点は,シングルマザーの背後に,社会から弾き出された男性がいることだ.いつの時代も弾き出される男性はいた.しかし,本人の自業自得ばかりでなく,30年におよぶ日本の景気停滞,デフレーションにより,戦後からバブルまでの期間よりはるかに多くの男性が社会から弾き出されているのも事実,このやる気がないわけではないのに社会から弾き出された男性たちを職業訓練などで生活が成り立つ職業に就ける社会体制にすることが必要と考える.働く意思がありながら,能力がないという理由で脱落する男性の数を減少させることが重要で,これらの男性をまず,再生させることがシングルマザーの貧困減少への近道と考えるからである.
ところで,育児には物理的に時間が必要だ.100%仕事はできない.二親(ふたおや)いてもなかなかたいへんな生活を,ひとりで育児も仕事もやるのはそもそもハンディがある.シングルマザーになる可能性がとても小さくても,その可能性があることは子どもを作る時に考えておく必要がある.そのリスクが大きく,シングルマザーになる覚悟がなければ,酷なようだが,子どもを作らないオプションを考える必要がでてくるのではないかと思う.結局苦労するのは女性(自分)だからである.