「『家族』は大切なもの」.これは,なぜなのか?当たり前すぎてわからない⁈ア・プリオリと考えればいい⁈親鳥や母猫などは子どもたちを本能的に守り育てる.さらに,ア・ポステリオリにも家族の尊さを描いた小説・ドラマは枚挙にいとまがない,というのはおおげさで,当然すぎて作品にならない.むしろ,家族の問題点をテーマとした作品のほうが多いかもしれない.でも,災害や大事故などが起きると必ず家族の大切さ,絆が再認識される.ア・ポステリオリにも「家族」の尊さは学習している.
ヒトはア・プリオリに寂しがり屋,孤独であることを避けようとする.また,愛する対象も必要だ.このふたつの本能をもっとも容易に解消してくれるのが,家族といえるだろう.家族は一度に両方の欲求を満たしてくれる.一石二鳥の家族が「大切」であることは当然と言えば当然である.
ほとんどの家族は生活をともにし,愛情を持って親が子を養育し,互いに助け合い,楽しむ.家族で生活することが日常であるため,それが特別なものだと認識せずに暮らしている.失くしてからその大切さがわかるものかもしれない.
幸福はどこも同じだが,不幸はそれぞれ違うという主旨のことをドストエフスキーは書いたが,幸福も不幸もそれぞれ違う.家族もまた,それぞれ違う.平均的な家族はあるかもしれないが,そして,それがほとんどかもしれないが,その内容は少しずつ差がありユニーク(唯一無二)だ.とても愛情に満ちた幸福な家族から,それほどでもない家族まで微妙な違いが家族ごとにある.子を虐待したり,育児放棄する親もいる.どうしても親や家族に馴染めない子もいる.家族はユニークで,一家族,一家族が真実,事実だから,全てが正しい.一般的には,家族は大切なものであるが,違和感を覚えるひとがいるのも事実だ.そして,その違和感は間違いではない.
一人は家族とは言わない.夫婦は家族だが,家族というよりも夫婦ないしは子どものいない夫婦という.子どもがいれば,まちがいなく家族だ.兄弟がいなくても,三人家族でも.四人が一般的,最近少なくなった五人家族,これに祖父母が加われば立派な大家族だ.
家族とはやはり一緒に生活をする人だろう.一時的に単身赴任をする場合も含めて.