NTT,東北新社両社長が国会答弁で「懇親目的」,「便宜依頼ない」.それはそうでしょう,あきらかな便宜を依頼するわけがない.だから,おっしゃることを信用します.しかし,何もなかったかどうかはわかりません.言外のメッセージがあったかもしれない.証拠を残すような言動はなかったでしょうが,無言のコミュニケーション,阿吽の呼吸,忖度,権謀術数に長けずしてなかなか出世はできないでしょう.
ただ問題はそれほど単純ではない.利害関係のある会社社長と大臣や官僚が,担当者と役人が,便宜依頼なしでも食事をしてはいけないのか.お茶を飲みながら打ち合わせができないのか.その時自分の分を払わなければならないのか.利害関係がなければいいのか.自分の分を払えばいいのか.利害関係があるなしはどう決めるのか.
便宜供与もクロから限りなくシロに近いささいなものまでさまざまだ.高額飲食をごちそうになって何にも返さないのも心苦しいだろう.違反にならない程度の便宜を与えてしまうかもしれない.大臣や官僚を魚民や鳥貴族に招けないだろう.公平かつ厳正な手続きの元に認可が下りても,何かお礼したいと思うこともあるだろう.公務員は,純粋に懇親の飲食や儀礼上の物品も受け取れない⁈それができないのもおかしい⁈
問題を難しくしているのは,「李下に冠を正さず」が出発点にあり,疑われるようなことをしない,という前提があるからだろう.そして実際,不祥事もある.しかし,純粋に「よろしく」という儀礼としての飲食や,中元・歳暮,おみやげという贈答の習慣や伝統がもともとある.俸禄が国税で賄われる公務員の宿命とはいえ,過剰な倫理規定があることも問題を複雑にしているが,しょうがない.議論は出入口一つの袋小路に入り込んでしまう.
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